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船場に住まう若手クリエイターをご紹介。 フックアップ、船場。 ~写真家・木村華子 篇~

2019.09.30

木村華子(きむらはなこ)

もとは、繊維の都だった船場センタービル周辺は、時を経て一新。クリエイティブな会社が軒を連ね、若手クリエイターも数多く生息しているエリアへと変貌を遂げた。

界隈のクリエイターをフックアップすべく、始まった連載の記念すべき第1回に登場してくれたのは、写真家の木村華子さん。「UNKNOWN ASIA 2018」のグランプリを受賞。シンガーのSIRUPやZINらも所属するアーティスト・コレクティブ「Soulflex」のメンバーとしても活躍中。そんな彼女が、写真に出会ってから現在に至るまで。そして彼女が思う船場の魅力を、余すことなく語っていただききました。

木村華子(きむらはなこ)

写真家。1989年、京都府生まれ。同志社大学文学部美学芸術学科卒。大学在学中に写真と出会い、写真家を志す。主な受賞歴に大型写真コンペ「御苗場vol.11」にてレビュアー賞二部門同時受賞、「KYOTO PHOTO AWARD2013」アワード部門にて優秀賞受賞、アートフェア「UNKNOWN ASIA 2018」グランプリなどがある。『カジカジ』や『Meets Regional』など雑誌や、シンガーのSIRUPらが所属する11人組のアーティスト・コレクティブ「soulflex」のメンバーとしても活躍中。

音楽で挫折の先にあった写真。船場は写真家にとって最高の街。

音楽で挫折の先にあった写真。船場は写真家にとって最高の街。

ーー「UNKNOWN ASIA 2018」の受賞を機に、海外での展示などにも積極的に参加されてますよね。そもそも、写真との出合いは?

小さい頃から人並みには触れていたとは思うんです。それこそ、写るんですとか、デジカメとか。ただそれよりも音楽に熱中していたんですよね。中学2年の時に始めたアルトサックに夢中で。結局、大学2年の終わりまでは音楽漬けの日々でした。今でも音楽は好きなのですが、才能がある人なら一つの練習で10レベルが上がるとします。でも、私の場合は一つの練習で1レベル上がるのがやっとで。プレイヤーとして限界を感じたんですよね。

ーーで、燃え尽きた先に出会ったのが写真だった……と。

就活のスタート時期でもあったので一度は普通に働くことも考えたんですが、エントリーシートを書く以前で挫折して。そもそも社会の入り口にも立てないのか……と、頭を抱えました。そこで、デスクワークよりも作品作りが向いてるのかもしれないって思ったんですよね。で、何を作ろうか考えている時に写真と出会ったんです。街中や雑誌、インターネット……どこを見ても写真が溢れていて。これは仕事にできるんじゃないのかって。

ーーなるほど。

とはいえ、写真が好きでも、知識や技術はゼロ。「週に1回7ヶ月通うだけでフォトグラファーになれる」という触れ込みの専門学校に通い出して。大学も専門学校も無事に卒業して、スタジオで働き始めたころに船場に住み始めたんです。

ーー生まれ育った京都からの上京。大阪市内というのはわかるのですが、どうして船場を?

まず、船場ってどこへ行くにもアクセスが至便ですよね。さらに、周囲には広告代理店や制作会社、出版社……と、クリエイティブな会社も多い。ミナミへもキタへも行きやすくて、商業的な拠点として申し分ないんですよ。

ーー確かに。

それに、周囲に住んでいるクリエイターさんが多くて、いい意味で刺激的。船場センタービルみたいな何でも揃う複合施設があり、少し歩けば靭公園で自然にも触れられる。私にとっては、作品作りをする上でインスピレーションが湧きやすい環境だったんです。結局そのまま居着いちゃって、上京してからずっと船場に。

ーー写真家として作品を作り出したのはいつ頃ですか?

上京前の実家に住んでいた頃ですね。「『御苗場』っていう写真コンペがあるから出してみたら?」と、知人に勧められて出展してみることにしたんです。作品としては一作目だったんですが、レビュワー賞を2ついただけて。

1作目the end of THE BEGINNING, is the  beginning of THE END.より

1作目the end of THE BEGINNING, is the beginning of THE END.より

ーーこの受賞を機に、アートと商業二足のわらじを履き始めるわけですね。

時を同じくして、フォトグラファーの西岡潔さんと出会ったです。西岡さんはアートと商業の両方に取り組んでいるフォトグラファーで「両方やっていいんだ」と。だったら、私もそうなりたいって。

ーー商業とアートの線引きはどのようにしていますか?

それこそ、商業写真にはクライアントがいるので、そのゴール目掛けてシャッターを切るわけですよね。だから、自分が純粋に作りたいと思う作品とは乖離していて。それこそ、「UNKNOWN ASIA 2018」のグランプリ受賞後からは「作品っぽく撮ってほしい」というようなオーダーも増えてきて嬉しい気持ちではあるんですが、あくまで商業とアートは別物ですね。

3作目のSIGNS FOR [          ]では「UNKNOWN ASIA 2018」のグランプリを受賞。

3作目のSIGNS FOR [          ]では「UNKNOWN ASIA 2018」のグランプリを受賞。

アートと商業の境界にある、コラージュ作り。

『カジカジ』2019年4月号では自身も所属するアーティスト・コレクティブ「Soulflex」のSIRUPでコラージュを作成。

『カジカジ』2019年4月号では自身も所属するアーティスト・コレクティブ「Soulflex」のSIRUPでコラージュを作成。

ーー確かに、受賞後はアート寄りの作品を雑誌でもやられていますよね。

やはり商業では、完全なアート作品を作るのは難しいんですよね。そこで、悩み抜いた結果行き着いたのが写真のコラージュ作品。自分で撮った写真を切り抜いてそれを、また別の素材の上に置いて……。それを再度撮影するという。

ーーなるほど。

コラージュを始めたことで、商業とアートの間をちょうどよく表現する手法に出会えたというか。提案する幅が増えた気がしていて。雑誌の編集長に花と髪色をコラージュする企画を持ち込んで、実際に採用してもらえたりもして。

『カジカジH』vol.61では「花の色は」より。

『カジカジH』vol.61では「花の色は」より。

ーー「Soulflex」のEPジャケットでも、コラージュをされていましたよね。

「Soulflex」の活動は、「木村華子」らしさよりも「Soulflex」らしさを重視しているんですよね。11人のクルーにはステージに乗らない人もステージマンもいるんですが、それ一本で活動しているクルーもいれば、普段は別の仕事をしているクルーもいる。それらが集まったアーティスト・コレクティブが「Soulflex」なんですよね。だから、商業とアートの間にある存在というか。それゆえに、コラージュというスタイルがバチッとハマって。

来年10周年を迎える「Soulflex」の新EPのジャケットでもコラージュを手がけた。

来年10周年を迎える「Soulflex」の新EPのジャケットでもコラージュを手がけた。

作品づくりの素材は、船場センタービルでディグ。

作品づくりの素材は、船場センタービルでディグ。

ーーコラージュにはアルミや布、紙……様々な素材を用いていますが、調達はどちらで?

船場センタービルで手に入れることが多いですね。近所に住んでいるので、空いた時間や仕事の前に気軽に探しに来られる場所ですし、いろんな素材が揃っている。店数が多くジャンルも多いので、散歩しているだけでも楽しいんです。

ーー素材の多さは同業種が多い、船場センタービルならではですよね。

最近の京都のホテルのイメージビジュアルをコラージュで作ったんですが、その時の素材も船場センタービルで手に入れました。商業写真を撮るときに使うバック紙や布を買いに来ることも多いので、めちゃくちゃお世話になっていて。

布や紙の材質の豊富さ、交渉次第で値切りもイケる雰囲気が魅力だそう

布や紙の材質の豊富さ、交渉次第で値切りもイケる雰囲気が魅力だそう

ーーなるほど。アートに商業に奔走される毎日だと思いますが、今後やってみたいことはありますか?

ディレクションからさせてもらえるさせてもらえるファッションの仕事に挑戦したいですね。URのWEBマガジン『OURS.KARIGURASHI MAGAZINE』で、ファッションポートレイトをさせてもらったんです。その時に、団地選び、モデル選び、スタイリストのブッキング、そして撮影……と、全て自分でやったのが面白くて。あとは、新しいこと挑戦したい若者と何かを一緒に作るっていうのも楽しそうですね。

ーー今後の活躍も楽しみにしています。今日はありがとうございました。

大学時代に音楽で挫折。その先で出会った写真。アートと商業で二足の草鞋を履きこなしながら、その間に位置するコラージュに出合った写真家の木村華子さん。更には自身が参加するアーティスト・コレクティブ「Soulflex」は来年で10周年を迎える。随所に見所が満載の彼女からは、これからも目が離せなさそうだ。

取材・文・写真:ロマン

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