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リメンバー、船場。 vol.2 ~ 山冨商店 編 ~

2019.11.18

服地専門店の[山冨商店]

来年開業50年を迎える、船場センタービル。そんな船場センタービルの歴史をひも解くべく、この地で長らく商売をする商店をピックアップ。第2回は、服地専門店の[山冨商店]さんにお邪魔して、ビルの変遷、そして商売の軌跡をお伺いしました。

オープン当初から、船場センタービルに入居した服地の老舗。

オープン当初から、船場センタービルに入居した服地の老舗。

ーー今日は、よろしくお願いします。[山冨商店]さんは船場センタービルのオープン当初から、入居されていたとお聞きしました。

そうなんですよ。うちは創業が1964年で、先代である義父が、久太郎町のあたりにお店を構えていたんです。その場所が船場センタービルの建設地となったことがキッカケで、優先的にビルに入居できて。

ーーなるほど。

僕自身も、もとは京都の老舗の漬物屋で働いていたので、当時のことが詳しくわかるわけではないんですが、新しい商業施設ということもあって、かなり活気があったと思います。

ーー[山冨商店]さんを継がれたときはどうでしたか?

僕が[山冨商店]に来たのがおよそ40年くらい前なんですが、その当時もかなり景気がよかったことを覚えていますよ。それこそ、船場センタービルの中で、8号館・4号館・5号館……と、3つ場所で商売をしていて。バブル期には「7億で店を譲ってくれ!」なんて人が来たりもしました。

ーー現在も、3つの場所で商売を?

義父が2013年に亡くなったんですが、そのタイミングでお店を二人の義姉と財産分与して。僕らの家族は5号館の場所を相続したんです。

創業時から続く、服地の卸売専門店。スタッフは創業時から店に立つ[山冨商店]の生き字引。

創業時から続く、服地の卸売専門店。スタッフは創業時から店に立つ[山冨商店]の生き字引。

ーーちなみに、ここは4号館ですが、この場所は新たに借りられたんですか……?

もとは、僕の代で店じまいしようと考えていたんです。正直な話、売り上げも少なく、スタッフも僕と経理の方しかいない状態で。そんなタイミングで息子がウチで働くことになって。若いアイデアのおかげで、経営状態もかなり回復して。新たな事業のために新たな事務所を借りたんです。

ーーなるほど。

息子は、関東で営業の仕事をしていたので、昔ながらの卸売とか小売とは無縁だったんです。だからこそ、商品の売り方にたくさん疑問を持ったんですよね。

ーー息子さんはどういう店に疑問を?

なんというか、何もかもが不透明だと感じて。僕らの仕事は仕入れて売ることでも、値札もなければ、売る対象次第で値段も変わる。「いわゆる、この人は付き合いが長いから」とか「この人は一見さんだから」とか。商売人らしくて良いという人もいますが、それでは全然顧客に対して平等じゃないなぁと。

お店では、カタログを見ながらのオーダーも可能。

お店では、カタログを見ながらのオーダーも可能。

ーーたしかに。

そんな疑問を抱えて悶々としているときに、フラッと来店されたお客さんがいて、カタログを眺めたあとに、30万円くらいの生地を買ってくださったんです。ただ、その方は北海道在住でお店へなかなか来られない状態で。「その時にECサイトを作ろう」って思ったんです。

活路を見出したのは、ひとりのために、作ったECサイト。

ECサイトの利用者はハンドメイド作家や、ファッションデザイナーなどがメイン。

ECサイトの利用者はハンドメイド作家や、ファッションデザイナーなどがメイン。

ーーECサイトを作るというのは、[山冨商店]にとって、新たな挑戦ですよね。

そうですね。遠方の方にカタログを見てもらうためにはECサイトが一番よかったんです。僕がずっと疑問に思っていた値段の透明感も担保できて。誰もが見やすくて平等なサイトを作ることに重きを置きました。父は「ネットなんかで売れるの?」って半信半疑でしたが、初月に50万円を売り上げて「ネットってすごい!」と、考え方を改めてくれました(笑)。

ーーなるほど。

今は店頭販売より、ネット販売がメインになって、月1000万を超える売り上げが出せるようになりました。従業員も増えて、会社の雰囲気もグっと良くなったように思います。

船場の老舗は、この地でずっと商売を続ける。

5号館には、常連客が訪れるスペースとしての役割が。

5号館には、常連客が訪れるスペースとしての役割が。

ーーECがメインになると、例えば船場から離れて事務所を構えるという選択肢もあったと思うんですが。

うちは、船場でずっと商売を続けていますし、船場=繊維という強いブランド力は今でも健在なんです。だからこの場所を離れるということは全く考えませんでした。船場センタービルもプロの場所って感じがして本当に面白いと思うんですよ。

ーーこれからの船場センタービルでどんな新しいことができると思いますか?

例えば日曜開館とか、全体を変えることも大切だと思うんですが、と同時に個店力を上げることも大事だと思うんですよね。個店が面白ければ、人は自然と集まってくると思っていて。

ーーなるほど……!

あとは、空いているスペースを若い人に貸し出しても面白いんじゃないかなって。飲食店だったり、アーティストに貸し出してアトリエにしたり……。お金はないけど、面白いアイデアを持っているっていう人にうまく使ってもらえたら、雰囲気も変わると思います。

ーー今日はありがとうございました!

船場の老舗は、この地でずっと商売を続ける。

好景気とどん底を経験した老舗は、創業時から、訪れるお客さんを守りつつ、新たな顧客を開拓するECサイトという挑戦で、V字回復を遂げました。生地の購入はお店はもちろん、ECサイトからも購入可能なので、ぜひチェックしてみてほしい。

取材・文・写真:ロマン

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